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<日航>「厚遇」に批判 安倍政権が再生検証方針

民主党政権時代に公的支援を受けて再建した日本航空(JAL)に対し、安倍政権や与党の自民、公明党が風当たりを強めている。会社更生法を適用されたうえ公的資金を投入された日航が法人税減税の特例措置を受けていることには元々、自民党から「(ライバルの全日本空輸などとの)競争上問題だ」と批判が出ていた。さらに、最近は昨年9月に東京証券取引所に再上場した日航が同社株を3割以上保有する外国人株主に配当する方針を示していることに対して批判が噴出。安倍政権は日航再生を検証する方針を示している。

日航は10年1月の会社更生法の適用申請に伴い、借金が大幅カットされた上、企業再生支援機構から約3500億円の出資を受けた。人員削減なども行い身軽になった日航は11年3月には更生手続きを終え12年3月期連結決算では2000億円を超える過去最高益を計上。同年6月には東証に再上場を申請、同9月に1部上場を果たした。

日航再生は民主党政権が京セラ創業者の稲盛和夫氏を再建の担い手として招くなど尽力した案件。そんな経緯もあり、自公は「全日空など他社との公平な競争をゆがめる」と反発してきた。

自公側は再上場後の日航株の約38%を保有する外国人投資家が配当を受けることも問題視する。18日の参院予算委員会では自民の西田昌司議員が「日航が配当できるのは国民負担があったためだ。利益の4割(近くを配当として)海外に出すのは売国的な行為だ」と追及。麻生太郎財務相は「税金で助かった会社の配当が海外に行くのは腑(ふ)に落ちにくい」と応じた。

日航は足元で過去最高益ながら、破綻で莫大(ばくだい)な欠損金を計上したことで、19年3月期までに計4000億円規模の法人税が免除される可能性がある。自公両党はこの措置も「競争上、不公正」としており、税制改正で見直しを議論する構えだ。

安倍晋三首相は「日航再生には多くの問題があり、今後、法制度が必要かも含めよく検証する」と表明。国土交通省は政治圧力にも押される形で、公的支援企業の経営に一定の制約を課すガイドライン(指針)作りを検討中だ。経営破綻からわずか2年足らずでスピード再建した日航。しかし、再建を主導した稲盛名誉会長が6月にも退任する見通しの中、経営陣が一段と政治の厳しい風圧にさらされるのは必至だ。

◇日航再建と「公正な競争論」に絡む動き

10年1月 日航が会社更生法の適用を申請

2月 東証の上場廃止

11月 東京地裁が更生計画認可

12月 企業再生支援機構が約3500億円出資

11年3月 更生手続き終結

12年5月 12年3月期連結決算の営業利益が2049億円と過去最高。全日空の伊東信一郎社長が「公正な競争環境の確保を」と訴える

6月 日航が東証に再上場を申請

7月 自民党国土交通部会が日航再上場の反対決議

8月 羽田雄一郎前国交相(民主)が公的支援を受けた企業に一定の制約を課すガイドライン(指針)の検討を表明

9月 日航が東証1部に再上場。機構の支援終了

11月 国交省が指針作りを検討する有識者会議設置

羽田空港の新たな国内線発着枠で、国交省が全日空に日航の2倍以上を配分

13年1月 自民党税制調査会で野田毅会長が会社更生法適用企業の法人税減免措置見直しの検討表明

2月 参院予算委で自民議員が日航の外国人株主への配当方針などを批判