この江戸川乱歩賞「破線のマリス」が映画化されるときの
原作者、野沢 尚氏のコメント
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「映画化にあたって」野沢 尚
Message from Hisashi Nozawa
この原作小説が出版された時、「テレビ界の内部告発小説」
とよく言われた。
それは間違っている。私に告発したい相手がいるとしたら、
それはテレビの作り手ではなく、 視聴者の方だ。
報道被害をはじめとするテレビから垂れ流しにされる情報を、
視聴者はこれまで、あまりにも無感覚で受け止めてきた。
過剰な映像処理や劇的な音付けに簡単に騙されてしまう。
大衆心理の操作など、この物語のヒロインのように、
指先一つの映像編集で可能なのだ。
だからテレビの情報を信じてはいけない。疑ってかかれ。
それは、テレビ界の人間でもある私からの、切なる願いでもある。
簡単には騙されない視聴者がいてこそ、作り手に緊張感が生まれ、
テレビは成熟の時代を迎えるのではないか。
この映画が、報道被害をはじめとする様々な問題に揺れるテレビ界を突き刺し、
その向こう側にいる視聴者を、強烈に揺さぶってくれることを祈っている。